(コメント)
風邪薬を飲んでも治らない咳は、
もしかすると百日咳かもしれません。
百日咳は2010年や2012年にも流行したことがありました。
百日咳はもともと、子供の病気と考えられていましたので、
予防接種も、子供を対象としたものになっています。
日本では、ジフテリア、百日咳、破傷風を合わせた
三種混合ワクチンが長く使われていました。
Diphtheria、Pertussis、Tetanusの頭文字をとってDPTワクチンとも呼ばれます。
2012年には、不活化ポリオワクチン(inactivated polio vaccine)を加えた
四種混合ワクチンも使われ始めました。
このように、子供のうちに、
百日咳の予防接種はうけることがほとんどなのですが、
この効果が、永久に続くわけではなく、
大人になった頃には、効果が無くなっていることが多いようです。
子供が百日咳になると、
死につながる恐ろしい病気ではありますが、
大人の場合は、そこまでひどくなることはありません。
しかし、感染した大人がいると、
まだ免疫ができていない子供への感染源になる可能性があり、
そういう意味では危険です。
百日咳の治療には、
エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどの
マクロライド系抗菌薬が使われます。
ただ最近は、耐性を持つ菌が増えていて、
マクロライドでは効果が無いことも多いようです。
ニューキノロン系抗生物質、セフェム系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質なども使われます。
痙咳に対しては鎮咳去痰剤や痰の吸引、時に気管支拡張剤、酸素吸入などを行ないます。
重症例ではγグロブリンを大量投与することもあります。
その他、治療としては、十分な栄養と水分補給が重要で、
更に、咳の発作を誘発させないように、室温20℃以上にして、低温を避け、
加湿器により室内の湿度を上げ、
水分を充分に与え、粘性の高い痰を出しやすくします。
煙草(タバコ)や煙も、咳を誘発しますので、
避けるようにします。
抗菌薬の発達で、漢方薬を使う場面は少なくなりましたが、
漢方薬も効果を発揮することがあります。
百日咳に良く使われる漢方薬としては、
小柴胡湯(しょうさいことう)と半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)との合方である
柴朴湯(さいぼくとう)、
小青龍湯(しょうせいりゅうとう)、
橘皮竹筎湯(きっぴちくじょとう)、
麦門冬湯(ばくもんどうとう)、
甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
皀莢丸(そうきょうがん)、
麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、
麻杏甘石湯加半夏茯苓陳皮生姜(まきょうかんせきとうかはんげぶくりょうちんぴしょうきょう)、
頓嗽湯(とんそうとう)、
などがあります。
民間薬としては、
南天の実、
仙人掌(さぼてん)
蓮根(れんこん)の汁
蜆(しじみ)の殻の粉末
弟切草(おとぎりそう)と甘草
梅干と蜂蜜
天花粉と人参粉
土竜(もぐら)の黒焼
梨の蒸焼
金柑(きんかん)の氷砂糖煮
なども利用されています。
大麻取締法で禁止されていますので、現在は使えませんが、
昔は、大麻も百日咳に利用されていたようです。
風邪と思って風邪薬を飲んでも
咳がなかなか止まらないような時は、
百日咳を疑ってみた方が良いかもしれません。