(コメント)
6月4〜10日は「歯と口の健康週間」です。
6月4日は「む」と「し」で「むし」になり、
虫歯と掛けたようです。
虫歯の予防に、記事ではキシリトール(xylitol)の
活用をすすめています。
虫歯の主な原因は、口の中にいる
「ミュータンス菌」と呼ばれる細菌の一種です。。
このミュータンス菌は
食事の後に口に中に残った、
糖分を栄養源にして
歯の表面に歯垢(しこう;プラーク)と呼ばれる
ネバネバした菌の固まりを増殖させます。
ミュータンス菌は、その歯垢(しこう;プラーク)の中で、
糖を分解して、酸を作り、
このミュータンス菌が産生した酸により
歯の表面のエナメル質が溶かされ、
穴が開いてしまいます。
記事には、
「キシリトールはトウモロコシなどから抽出される天然の甘味料で、ミュータンス菌の体内では分解されず、虫歯のもとになる酸ができない。さらに他の糖分の分解なども妨げ、栄養を取り込めなくなったミュータンス菌は弱って減少し、プラークができにくくなる。いずれもキシリトールだけが持つ特徴という。」
と書かれていますが、
色々と間違いがあります。
まず、「トウモロコシなどから抽出」と書かれていますが、
抽出されるキシリトールは、一般的な流通していません。
トウモロコシの「穂軸」も原料とては使われますが、
一般的にイメージされるトウモロコシの部分ではありません。
また、「抽出」という言葉も不正確で、
まず、トウモロコシや樺の木、その他の樫木から
「キシラン」を抽出し、この「キシラン」から「キシロース」を製造し、更にこの「キシロース」を還元すると「キシリトール」になります。
記事に「天然」と書かれていますが、
上記のように、工業的な加工が行われますので、
「天然」というのは間違いだと思います。
「他の糖分の分解なども妨げ」
については、間違いです。
更に「栄養を取り込めなくなったミュータンス菌は弱って減少し」というのも誤りで、栄養を取り込めなくなったからミュータンス菌が減少するというよりも、
歯垢のpHを頻繁に下げないためと考えられています。
ミュータンス菌は、pHの低い状況で
生き残る力(耐酸性)の強い細菌です。
そのため、頻繁に間食し、歯垢のpHが頻繁に低下する環境では、
耐酸性の強いミュータンス菌は優勢になります。
これに対し、pHがあまり低下しない環境では、
他の菌が優勢になります。
そして最大の問題は
「キシリトールだけが持つ特徴」と書かれている所です。
「キシリトール」だけが優れた効果を持つ印象を与えますが、
ミュータンス菌の数を減らす効果は、
キシリトール独特のものではなく、
歯垢のpHを低下させない
ソルビト−ル、マルチトール(還元麦芽糖)、エリスリトールなどでも同じ効果があると考えられます。
記事に出てくるキシリトール研究の第一人者のマキネン(Makinen)氏も、
「酸をつくらない他の糖アルコールでも同じように見られる」と
認めています。
そして、アメリカの食品医薬品局(FDA)及びEUの委員会は、
キシリトール、
ソルビト−ル(ソルビット)、
マンニトール(マンニット)、
マルチトール(還元麦芽糖)、
ラクチトール、
還元麦芽糖水飴、
還元グルコースシロップなどの間に
齲蝕誘発性の違いを認めていません。
色々と問題のある記事ですが、
キシリトールが歯に良いことは間違いないようです。
ただ、記事にもありますように、
虫歯の予防の基本は
歯ブラシや歯間ブラシ、フロスなどを使った
歯みがきです。
その上でフッ素の入った歯みがき剤の利用や
キシリトールの利用が良いといえます。
歯ブラシも電動歯ブラシを利用することで、
歯垢を落とし易くなります。
そして、定期的に歯科検診を受けることも重要です。
虫歯がなくても、
歯周病になっていることもありますので、
自覚症状が無くても、
歯医者さんに行きましょう。