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鉛中毒(なまりちゅうどく;lead poisoning)は、現在の日本では少なくなっていますが、少し前までは、水道管に鉛が使われていたり、塗料に鉛が含まれていたり、ガソリンに鉛か含まれていたりして、鉛中毒の危険性も高かったようです。
鉛は、重金属の一種で、元素記号 Pb で表され、原子番号は 82 です。
体内に入った鉛は酵素のチオール基(SH基(えすえいちき))と強固に結合し、チオール基を有する種々の酵素の働きを阻害します。
これにより、貧血や神経障害が起こります。
その他、性格の変化、頭痛、感覚の喪失、脱力、金属的な味を感じる、歩行困難、食欲不振、嘔吐、便秘、激しい腹痛、骨や関節の痛み、腎臓障害、性欲減退、不妊、勃起機能不全(ED、インポテンツ)なども起こります。
軽度の鉛中毒では、多くの場合、症状はないようです。
症状がみられる場合も、数週間後かそれ以上経過してから現れることが多く、症状は周期的に再燃することもあります。
日本では、デトックスが一時ブームとなり、現在も続いていますが、デトックスは、この鉛などの重金属類を排出して健康になるというものです。
健康食品・サプリメントでのデトックスでは、タマネギに含まれるケルセチンが鉛の排出に効果があると言われています。
鉛はチオール基(SH基)と結合しやすいとのことですので、SH基を持つ、システインやその化合物であるシスチン、グルタチオンなどにも効果が期待できます。
漢方薬には、昔は、鉛が使われていました。
鬱(うつ)や肝炎などに良く使われる、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)という漢方薬方は、『傷寒論』という、漢の時代に出きたとされている本を出展としていますが、そのもともとの内容は、
柴胡4両、龍骨・黄芩・生姜(切)・鉛丹・人参・桂枝(去皮)・茯苓各1両半、半夏(洗)2合、大黄2両、牡蠣(熬)1両半、大棗(擘)6枚」
右十二味、以水八升、煮取四升、内大黄、切如碁子、更煮一両沸、去滓、温服一升。本云柴胡湯、今加龍骨等。
となっていて、鉛丹(えんたん)という鉛化合物(四酸化三鉛 (Pb3O4)が主成分)を使用しています。
現在では、この柴胡加竜骨牡蠣湯を使用する時には、鉛丹は除いて使うことが普通ですので、ご安心下さい。
神仙系の医学では、草木は腐るが鉱物は腐らないという理由で、鉛や水銀などを含んだ鉱物系の生薬(しょうやく)を利用することが多く、その副作用で死んだ人も多いようです。
不老長命を望んで飲んだ薬で命を落とすとは、皮肉なことですが、現代の日本の状況を考えると、笑い事ではすまないかもしれません。
マグロなどを食べると、水銀中毒のおそれがあると問題になったことがあります。食物連鎖の影響で、水銀が濃縮されるためですので、水銀だけでなく、鉛などの他の重金属類も濃縮されている可能性もあります。
マグロなどには、食用油であるEPA・DHAが含まれ、健康に良い面もあり、難しい所です。
EPA・DHAを摂取するのが目的であれば、マグロなどから摂取するよりも、健康食品・サプリメントで摂取した方が安全かもしれません。
水銀中毒には、古来、山帰来(さんきらい)とい生薬が使われてきました。
別名を土茯苓(どぶくりょう)ともいい、サルトリイバラの根茎を用います。
薬事法上、サンキライは医薬品扱いとなりますので、健康食品やサプリメントに配合することはできません。
日本は安全性が高いと思っていたのですが、日本でも、汚染が進んでいる可能性があるようです。
東京の荒川で、
ヨモギからは最大測定値0・5mg/lと、環境基準値の50倍、
ハゼからは0・2mg/lと基準値の約20倍
もの鉛が、検出されたようです。
http://www.yakuji.co.jp/entry8074.html
中国製のアクセサリーや陶器などから、高濃度の鉛が検出された事件もありました。
中国:鉛中毒症状発生に対する抗議 などもあるようです。
http://mac.blog.so-net.ne.jp/2009-08-18-1
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