(コメント)
梅毒(ばいどく)は、バイキン(黴菌)の黴の文字を使って黴毒(ばいどく)とも書きます。英語では、Syphilisです。
スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum;トレポネーマ・パリズム)によって起こる性感染症の一種です。
梅毒にかかっている相手との1回の性行為で感染する確率は約3分の1です。
梅毒はその進行によって第一期から第四期までに分類されます。
第一期梅毒(感染して約3週間後)
男性はペニスに女性は外陰部、膣等に小豆大のしこりができ、その後 しこりの中心部が硬く盛り上がります。びらんや潰瘍ができることもあります。これらを下疳(げかん)といいます。
下疳は、肛門(こうもん)、直腸(ちょくちょう)、子宮頸部(しきゅうけいぶ)、唇(くちびる)、舌(した)、咽(のど)、指、まれにその他の部位にもできます。普通は1カ所だけですが、ときに複数できることもあります。
更に太ももの付け根部分のリンパ節がはれますが、痛みはともないません。
女性の約半数、男性では3人に1人は感染に気付かないと言われています。
また、もし気付いても、下疳はほとんど症状を起こさないので、放置してしまうことが多いようです。
大抵の場合、下疳は3〜 12週間ほど(多くは3週間)で消えてしまい、すっかり良くなったかのように見えますが、梅毒はひそかに進行していきます。
第二期梅毒(感染して感染6〜12週間後、通常約3ヶ月後)
病原菌が血液に入り、全身にひろがると全身症状が始まります。リンパ節の腫れ、発熱、頭痛とともに顔や手足に赤ピンク色の円形のあざができ次第に小豆大で、赤茶色の盛り上がったブツブツが現れます。
他の病気の発疹とは異なり、第2期梅毒の発疹は手のひらや足の裏にできるという特徴があります。
感染者の約25%には、この時点で治りかけの下疳がまだあります。
発疹はかゆみや痛みがなく、さまざまな形をしています。
脱毛症状をともなうこともあります。
発熱、疲労感、食欲不振、体重減少などもみられることがあります。
潰瘍性口内炎、全身のリンパ節の腫れ、眼の炎症、痛みを伴う関節炎や骨の炎症、肝臓の炎症による黄疸(おうだん)なども見られることがあります。
更に、少数に急性梅毒性髄膜炎が起こり、頭痛、首のこわばり、ときに難聴がみられます。
皮膚と粘膜が隣接している部分(たとえば、唇や外陰部の内側縁)や皮膚の湿った部分に、「扁平コンジローム」と呼ばれる隆起した部分ができることがあります。
この部分はきわめて強い感染力をもち、平たくなって、くすんだピンク色か灰色になります。この部分の毛は所々抜け落ちて、虫食い状態になります。
第2期から回復すると、病気は潜伏期に入り、感染は続いていても症状は現れない状態が数年から数十年、場合によっては一生続きます。普通、この時期の梅毒は感染力をもちません。
第三期梅毒(感染して約3年〜10年)
ゴム腫とよばれる大きめのしこりが皮下組織にできます。
第四期梅毒(末期症状)
感染から10年ぐらい過ぎると心臓、中枢神経、内蔵なども冒され重い症状が出てきます。
大動脈(だいどうみゃく)に動脈瘤(どうみゃくりゅう)ができたり、大動脈弁(だいどうみゃくべん)の逆流が起こり、胸痛や心不全が起き、場合によっては死に至ります。
神経脳や脊髄(せきずい)に多くの重大な障害が起こり、思考、歩行、会話など日常生活の活動に支障を来します。
ほうっておくと大変なことになりますが、きちんと治療すれば治る病気と言われています。
治療はいたって簡単で、抗生物質を飲むだけです。日本では、1ヶ月程度抗生物質を内服するのが標準的な治療です。この1ヶ月の治療でたいていは治ります。もし1ヶ月で治っていなければ抗生物質を変更すれば通常は治ります。
抗生物質が効かずに梅毒が何年も治らない・・・、などということはまずありえません。
他の人に梅毒をうつす可能性があるので、自分とセックスパートナーの両方が治療を終了するまでは、性的接触を避けるか、慎重な予防手段を講じる必要があります。
第1期梅毒と診断された場合、過去3カ月間に性的接触をもったすべての相手に感染の危険性があります。
第2期梅毒の場合は、過去1年間のセックスパートナーすべてに感染の危険性があります。
アメリカでは、ペニシリンの注射で治療することが多いようです。
第1期梅毒には、ペニシリンの単回投与が適当とされますが、1週間以内に2回目の注射を行う医師もいます。第2期梅毒には、必ず2回目の注射も行います。
日本での内服1ヶ月と比べると、楽なような気がします。
なぜ、日本では、抗生物質の注射が行われないのでしょうか?
今回の記事は、中国では、先天性梅毒の子供が、1時間に1人産まれているとのことで、かなり多いようです。
きちんとした治療を受ければ治る病気なのに、色々なことがあって、治療を受けないことが多いようです。
日本では、妊婦の検診に梅毒の検査もありますので、先天性梅毒の子供が産まれることは少ないと考えられます。
残念ながら、梅毒のワクチン(予防接種)はありません。感染して梅毒の病原体である Treponema Pallidum という細菌に対する抗体ができても、その抗体によって梅毒の感染を防ぐことはできません。
つまり、一度かかって治っても、再び感染する可能性があります。
確実な予防方法は、感染の危険のある相手とは性交渉をしないことです。